Case
事例
困っている人を「ひとりにしない」支援を支えるkintoneのコミュニケーション

北九州を中心に、生活に困窮した人や社会から孤立した人たちの生活再建を支援している認定NPO法人抱樸。「断らない支援」を目指し、数多くの拠点で事業を展開しています。
今回は組織横断的なコミュニケーションを行うためにkintoneをどのように生かしているか、抱樸内の複数部署のメンバーで構成されているkintoneチームメンバーの春田さんと蔦谷さんにお話をうかがいました。
抱樸の活動について
抱樸はホームレスのかたがたへの炊き出しの活動から始まり、現在では20以上の事業を展開しています。高齢者や子ども、障害のあるかたへの支援、刑務所を出たかたの更生支援など、幅広い分野で活動しています。
新たに力を入れている事業は「希望のまちプロジェクト」です。かつて特定危険指定暴力団の本部事務所だった場所に、多世代が利用できる包括的な福祉施設をつくり、多様な方と日常を共に過ごすことのできる場所をつくります。また、困ったときには相談機能や入所機能により、いざという時には頼れる場所にもなります。「助け」、「助けられる」ことで、お互いさまのまちづくりを目指しています。

kintone導入前の課題
kintone導入以前は別のソフトで対応記録の共有をしていましたが、複数の部署で対応している人についての情報なのに、記録を閲覧できるのは特定の部署の人に限られ、その他の部署からの質問には、聞かれた人がわかる範囲で答える状況でした。
全体の情報共有にはメーリングリストを使用していました。送る人は固定されがちで通達や指示の側面が強く、コミュニケーションのハードルが高いものでした。また新しく入った人は過去の情報を確認できないことも課題でした。
最初は小さなボランティア団体で関係者全員の顔が見えるところから始まりましたが、事業部も建物も増え「あの人は誰だっけ?」ということも起こるようになりました。
kintoneで気軽なやりとりが実現
当初、kintoneは子ども家族まるごと支援事業だけの利用でしたが、法人全体で活用するようになってから職員間のコミュニケーションが活性化しました。
「kintoneのスペースやスレッドでは、特定の部署や話題ごとに情報を整理できます。ある程度しぼられた人が見るので発信のしやすさが上がりました。」(抱樸 春田さん)

「何かがあればスレッドを立ち上げるのですが、やりとりの場が見えるというのはメーリングリストにはない感覚ですね。関心があれば入ってみようかなとなります。」(抱樸 蔦谷さん)

「kintoneでは気軽なコミュニケーションをとっていいよと発信し、敷居を下げることを意図的にしてきました。導入時、システムに詳しい久米さんに『会話調でいいんだよ』と教えていただいて楽になりました。」(抱樸 蔦谷さん)
「文字にもどれだけ気持ちをのせられるかというのは大事ですね。丁寧に書かなきゃと、ビジネス調では堅苦しくなりがちなところがありますが、いかにテンポよくできるかということを意識するといいですね。」(AISIC 久米さん)
日報やつぶやきを個人のスレッドやピープルで書くことで、何気ない会話が生まれ、お互いの理解が進んでいます。ときには田舎自慢や、愚痴の書き込みに「大変ですよね」という返しがあることも。仲間と連携している実感をもちやすくなったそうです。
「仲間が普段なにを考えているのかというのもわかります。全部の情報を追うのは難しいですが、あの人どうしているかな? と気になったときに見にいける良さがあります。」(抱樸 春田さん)
「情報量は多くなりますがスルーすることも選べます。同じ建物の中でこんなことをしているのだなと見つつも通りすぎることもあれば、気になって話しかけてみることもありますよね。kintoneも関わりの濃度を選べるのがいいですね。」(抱樸 蔦谷さん)
一方で、確実に情報を届けるために宛先を指定して通知する機能もあります。例えば⚪︎⚪︎さん支援チームといった既存のグループにはない宛先グループをつくりたいときは、kintoneチームのスペースで依頼を受けて新たな宛先を利用できるようにしています。組織の垣根を超えて縦横無尽にコミュニケーションできるようになりました。
希望のまちでさらに大きなチームに
抱樸は、希望のまち開設にあたりスタッフが増え、さらに大きなチームとなります。今後の活動についてお二人に展望を語っていただきました。

「新規事業を推進するメンバーは遠慮もあってどうしても孤立することもあるので、kintone活用の面で伴走すると共に新しいスタッフをようこそと迎えたいです。過去の蓄積も見えますし、kintoneで気軽に安心してコミュニケーションをとってもらえたらいいなと思います。」(抱樸 蔦谷さん)
「一つの部署が社会福祉法人となり組織としてレベルアップしますので、整備することもさまざまあります。地域に開かれた場所になることを大きく掲げていますので、地域のハブになるような役割もkintoneを用いて担えるのではと思います。」(抱樸 春田さん)
サイボウズも希望のまちプロジェクトを共同創設者として応援しています。今後も多くのかたの希望の存在として、素晴らしいチームワークを発揮されることを願っています。貴重なお話をありがとうございました。
【関連情報】
2025年6月17日、Zepp Fukuokaで開催される「kintone hive 2025 福岡」には抱樸の蔦谷さんが登壇予定です。ライブやレポートでのスピーチにぜひご注目ください!
【抱樸の各事業や管理部門での活用例】
ホームレスから子どもまで個別支援、感情の共有を大事にするNPOのIT活用術 前編
音声入力で圧倒的に便利に!1日2時間残業減――就労継続支援B型とホームレス自立支援、刑務所出所者生活サポート 後編