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全ステークホルダーの情報を一元管理――里親さんを支援する【認定NPO法人 日本こども支援協会】

  
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里親さんの支援をすることで、暴力や貧困ではなく愛のバトンを次世代につなぐことを目指す、認定NPO法人 日本こども支援協会。一般的な子育ての悩みに加えて里親さん特有の困難があるため、同協会が支援の仕組みを構築、提供しています。

「NPOを運営するうえで欠かせないサービスがキントーン」と語る同協会の事務局長 北村 政記さんに、キントーンをどんなふうに活用しているのか教えてもらいました。

日本子ども支援協会 北村さん画面キャプチャ.jpg 日本こども支援協会事務局長 北村 政記(まさき)さん。2010年に大阪で起きたネグレクトによる子どもの餓死事件を機にNPO業界に飛び込む。NPOのコンサルティング、キントーンを中心にDXを推進する奏ワークス株式会社、釣り事業(ガイドやECサイト運営)などを手掛けるパラレルワーカー。

里親さんに必要な支援があることを知ってもらいたい

ONE LOVE(ワンラブ)――これは日本こども支援協会が提供する、里親支援の中心的サービスです。ONE LOVEでは里親さんを支援するほか、里親のことを広く社会に周知し、里親および里親を支える市民のかたを増やしていく活動などを行っています。

230117チーム応援カフェセミナー_7.jpg 同協会では、現在4人の正職員で約6,500人のステークホルダーとの交流を実現している。


現状、4人に1人の里親さんが1年未満でギブアップしてしまうというデータもあり、里親支援はとても重要です。ところが、里親さんは家庭という閉ざされた空間で孤軍奮闘していることが多いため、必要な支援を用意しても知ってもらいづらい面があり、支援を広げるうえでの課題となっています。

230117チーム応援カフェセミナー_6.jpg 混同されやすい「里親」と「特別養子縁組」。里親には親権がないが、養子縁組は親権を伴う。特別養子縁組では、戸籍上の実親子関係も消滅。


里親支援の主な内容は、「オンライン里親サロンの開催」と「里親オンラインセミナーの開催」と「里親保険の創設」の3つ。

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「オンライン里親サロン」は、毎週土曜日に里親さんがZoomで集まって相談し合う場で、これまで累計4千名近い里親さんが参加しています。里親同士にしかわからない悩みなどを打ち明け合えるため、毎回少なくとも3時間は盛り上がるということです。

「里親オンラインセミナー」は、里親支援を専門とする第一人者を招いてお話ししてもらうもので、「里親に興味がある」人も参加可能。そして「里親保険」は、何かあったときのための賠償責任保険を、里親さんに対して無料で提供するものです。

「支援者で受益者でもある人」がすぐわかるように

このような活動をする日本こども支援協会では、キントーンやガルーンメールワイズなどのサービスを複合的に導入しています。まず、協会の内部で運営メンバー専用のWebサイトとして機能しているのがガルーン。チャットやスケジュール機能などが使われています。

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里親会員や支援者など協会外部の情報管理は、以前はセールスフォースを使っていましたが、キントーンに切り替えました。

コングラント(NPOの寄付募集をサポートするサービス)で生成される決済情報をデータベースに一括インポートしたかったのですが、セールスフォースでは難しく、専門のカスタマイズが必要だったのです。

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そこで2022年、ONE LOVEを本格的にスタートさせた際に思い切って、里親会員(受益者)の管理も寄付者(支援者)の管理も、すべてキントーンに移行することに。「この判断がすごくよかった」と、北村さんは振り返ります。

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「一番よかったのは、『全ステークホルダーの情報を一元管理できる体制ができたこと』です。当協会では、里親会員が寄付をしてくださることもあり、『支援者であり受益者でもある』というかたが一定数いらっしゃいます。以前は、支援者と受益者を別々のデータベースで管理していたので、そういうかたが見えづらくなっていました。

キントーンを使うことで『このかたは支援者であり受益者でもある』ということがすぐわかるようになったので、本当にありがたいです」(北村さん)

柔軟にアクセス権限を設定できるからチームを組みやすい

キントーンは他にもさまざまな面で活用されています。たとえば、里親会員を増やしていくこともそのひとつ。

当協会では里親支援を周知するためSEOに力を入れ、たとえば「里親」+「やめたい」といったキーワードで検索が行われるとONE LOVEの記事が上位に表示されるようにして、この記事から里親会員の紹介→登録へと誘導しています。


「里親 やめたい」検索画面(810).jpg 「里親」+「やめたい」で検索した際の画面。

ウェブサイトトップ.jpg 下のほうに「オンライン里親会に参加する」などのボタンが表示される。


登録選択画面(500).jpg

里親経験があるかたは里親会員に、それ以外のかたは応援メンバーに登録することができる。


ただし、里親会員は里親経験がある人しかなれないので、実際に経験があるかどうかを確認する必要があります。そこで当協会ではこの確認業務を、外部パートナーであるコングラントに外注しています。

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「このアウトソースを可能にしているのが、キントーンなんです。この図でいうと、コングラントさんは一番上の『里親審査管理』の情報だけ閲覧できればいいんですが、そういった柔軟なアクセス権限の設定は、他のサービスでは難しい。でもキントーンなら、それができます。

こんなふうに、キントーンには『必要な情報を一か所にまとめる』ことと、『立場の異なる人がいろんな形で参画する』こと、つまり『チームを組む』ことがしやすい仕組みが備わっているので、とても助かっています」(北村さん)

「里親会員マスタ」に里親さんの全情報を集約

里親会員と良い関係を築いていく工夫も、運営上欠かせません。そこで同協会では、「どの里親さんが、どれくらい、どんな支援を使ってくださっているか」といった情報をキントーンのデータベースで管理し、すぐ把握できる仕組みを実現しています。

230117チーム応援カフェセミナー_19.jpg 一番上の行が、里親審査業務にあたる部分。

まず、里親会員申込フォームに入力された情報はONE LOVE管理画面に保存され、これをキントーンに移して審査業務を行います。審査を通過したかたの情報は、右上の「里親会員マスタ」に移動。マスタでは、全里親会員の情報を整理して見ることができます。

さらに、里親会員のセミナー参加履歴や保険の申込み状況などの情報も、アプリ間でデータを連携して「里親会員マスタ」につなげています。

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「里親会員マスタ」は、こんな構成です。里親会員のリスト(画面左上)から特定の里親さんをクリックすると、そのかたから過去に届いたメールや、セミナーの参加履歴、入退会状況などの情報を見ることができます(画面右)。

「キントーンではこういった形で里親会員の情報が集約されているので、個別にメールを送る際は過去に参加されたセミナーに言及できて、おのずとコミュニケーションの質が高くなります。そういった対応を全スタッフが行える体制が実現できているのも、キントーンのおかげです」(北村さん)

プラグイン導入で寄付の累計回数や金額も集計されるように

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寄付をしてくれる支援者さんの情報も、里親会員の情報のしくみと同様に、「支援者マスタ」に集約されており、決済に関する複数のアプリと連携しています。ただし「里親会員マスタ」と大きく異なるのは、「決済情報を集計できる機能を備えている」という点です。

それぞれの支援者の「寄付の累計回数・金額」を把握することは、支援者の満足度向上において非常に重要です。ところが「支援者マスタ」からはそれがわかりませんでした。標準機能では「誰がいつ、いくら寄付してくれた」という一回ごとの情報を見られる=参照できるだけだったのです。

そこで北村さんがプラグインを探したところ、見つけたのが「ATTAZoo+(アッタゾ―)」。このプラグインを導入することで、「支援者マスタ」から累計の寄付回数・金額がすぐわかるようになりました。

(北村さんが「アッタゾ―」の取材を受けた記事に詳細が書かれています。こちら

メルマガ送信リストはメンテナンスで正確さをキープ

メールマガジンの運営においても、「送信リストを正しく作り、メンテする」というところで、キントーンが大事な役割を果たしています。

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以前は、同じかたにメールが重複して送られてしまうことがありました。たとえば、既に支援者として登録してくれているかたとセミナーで名刺交換をして、同じメールアドレスがリストに登録されることなどがあったのです。

こういったことも、キントーンの機能で防げるようになりました。メルマガ配信アプリで「値の重複を禁止する」と設定すると、登録澄みのアドレスを登録しようとした際は、自動的にはねてくれるのです。

さらに、メルマガを受け取った人が「配信不要」の意思表示をした際も、スムーズに配信を止められます。キントーンの「配信停止アプリ」にたまった情報をエクスポートし、リストに反映させています。

NPOを支える土台がなければ活動の拡大もままならない

最後に北村さんは、こんな話をしてくれました。

「キントーンはNPOの経営を支える土台だと思うんです。目につきやすいのはホームページなど、家づくりでたとえると内装や家具のような部分ですが、見えにくい土台がすごく重要です。その土台づくりをするうえで、なくてはならないのがキントーンです。

土台がなくても活動はできると思うんですが、活動を拡大させていくとか、かかわる人たちが気持ちよく長く働いていけるとか、そういった環境を整えるところがなかなか実現できません。そこはやはり、キントーンがないと叶わないと思います」(北村さん)

また、「キントーンを導入する際はプロの手を借りて初期構築すること」や、「NPOを応援してくれる法人の力を借りて運用すること」もオススメと北村さんは話します。

アーセスさんウェブページ.jpg

「本来なら有償のサービスを『チーム応援ライセンス』の対象団体には無料で提供してくれる、たとえばアーセスさんのような企業もあるので、そういった力を借りていくのもいいと思います」(北村さん)

キントーンが大好きで、つい最近「kintone認定アソシエイト試験」にも合格したという北村さん。「ぜひもっと多くのNPOの運営者や支援者の方にキントーンのことを知ってほしい」と、熱いエールを送ってくれました。

執筆 : 大塚 玲子 編集:チーム応援プログラム事務局