立命館大学 横田ゼミ×NPO共同開発PJ(授業編)ーフードバンクやヘルパー派遣、社会課題に取り組むチームのシステム構築
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立命館大学経営学部横田ゼミでは2017年後期授業で、NPO団体にヒアリングし課題を解決するためのシステム開発を授業に取り入れた。開発のベースとなるシステムはプログラミングの知識がなくてもシステムを構築できるサイボウズのkintone。文系の学生たちは、10月から12月の3カ月間の授業でいかにしてNPOのシステムを構築したのか? 授業の様子を取材した。
協力いただいた7つのNPO団体(敬称略・順不同)/課題
・ふうどばんく東北AGAIN/フードバンク事業および就労移行支援事業の業務管理システムの開発
・み・らいず/顧客管理システムの開発
・里地里山問題研究所/獣害対策の集落自立度評価と対応履歴管理システムの開発
・JAE/共同パートナー管理アプリの開発
・兵庫セルプセンター/事業所管理システムの開発
・G-net/業務管理システムの開発
・ぷろぼの/日替わりメニューのアレルギー対応アプリの作成
授業のサポートは、システム開発会社アールスリーインスティテュートが行った。
「前期の4月から7月では、学生さんに業務フローをぽんと渡して、さあ業務改善のための営業支援アプリを作ってごらんということをやりました。スパルタだねって、いろいろな人から言われました」と、アールスリーインスティテュートの金春利幸氏は語る。
授業をサポートしたアールスリーインスティテュートの池上緑氏(左)と金春利幸氏(右)
「学生さんは普段業務をしているわけではないので、見積もりとか納品とか書いてあってもピンと来ないんですよ。でも、自分で調べて勉強して、がんばって作ってくれたんです。じゃあ、今度実社会につながることをしようということで、後期はNPO法人さんの課題解決に取り組んでいます」(金春氏)
相手の業務を知らないとアプリを開発することはできない。そこにこの授業の狙いがある。
「NPO法人さんとのやりとりはkintone上やスカイプの会議で行います。実際に会いに行ったチームもいます。仮想的な課題ではなく、実際に社会との直接の接点を持ち、学生自身が何が課題なのかを発見して解決策を考える授業を目指しました」(横田教授)
フードバンク事業では使いやすいレイアウトが求められた
ふうどばんく東北AGAINは、まだ食べられるのに不要となった食品を企業や個人から無償提供してもらい、点検・整理して生活困窮者へ届ける活動を行っているNPO法人だ。提供された食品を必要とされているところへ届けるために、提供物品の情報と支援依頼情報を管理する必要がある。これまでは業務管理を紙の書類で行っていたが、デジタル化したいという課題があった。
画面を見せて相談するふうどばんく東北AGAIN担当チームのメンバー
「最初はアプリの機能を充実させたら喜んでいただけると思っていたんですが、ふうどばんくの担当者さんとスカイプでお話しすると、機能を増やすことよりむしろ使いやすいレイアウトを重視されていることがわかりました」(ふうどばんく東北AGAIN担当チーム)
トップページには、業務の流れにそって使用するアプリを配置した
申請者管理のアプリ画面
生活状況やアレルギー、調理器具についての項目も並ぶ。 提携団体やボランティアメンバーなど、アプリやパソコン操作に慣れていない利用者が多く存在するフードバンク事業では、一目でわかる使いやすさが重要だった。また、アプリを誰でもカスタマイズできるようにマニュアルの作成も依頼された。
アプリの使い方マニュアルも作成する
「ITとあまり接点のない人にもわかるように画面のキャプチャー画像をマニュアルに貼って、視覚的にわかるように工夫しています」 (ふうどばんく東北AGAIN担当チーム)
もっとも大変だったことは、先方の業務を理解することだという。どういう目的で、何をどうやって管理して、誰がアプリを使うのか考えながら、全体像を作っていった。
ヘルパー派遣の現場では介助の詳細な情報を共有
障がいのある人に対してヘルパー派遣業務を行うNPO法人み・らいずのアプリ開発を担当しているチームも、やはり、一番の課題は相手の業務を理解することだった。
み・らいず担当チーム
障がいや病気についての知識が足りず、ネットや本で調べて勉強した。また、実際に事業所を訪問して現場で働いている方の話も聞いた。最初は入力のしやすさを目指してシンプルな項目しか作っていなかったが、現場の方に見てもらってから、もっと詳細な項目が必要だということがわかったという。
現場では食事形態や介助の段階など詳細な情報が求められていた
システム開発をとおし、実際の業務を知る
kintoneはあくまでツールだ。しかし、システムは必ずそれを使う相手の業務と表裏一体の関係にある。システム開発を通じて、実際の業務内容を把握し、また、その業務がどのように行われおり、かつ、そのなかでどのようなデータが必要なのかということを知ってもらう。仕事が生まれて運用されていく様子を理解してもらうことが、このゼミの本当の目的だ。
学生にアドバイスする金春氏と横田教授
横田教授自身、試行錯誤を重ねながらスタートしたゼミだという。学生たちは何を思って受講を希望したのだろうか。
「募集要項を見て、自分で考えていろいろできるのは面白そうだなと感じました。ネットはあまり得意ではないのですが、チームで一緒に考えながら作っていくのは楽しそうだと思い、希望しました」
「パソコンや情報分野は苦手意識があったのですが、実際にやってみたら思ったよりはできました。こういう授業は新鮮です」
プログラムやNPOの業務に知識がなかった文系の学生はどのようなシステムを開発できたのか。その成果は「kintone café 大阪vol.16」発表された。
発表編に続く
アールスリーインスティテュートのNPO向けkintone開発支援特別プラン「ハイスピードSI for NPO」