Case
事例
「これはどういう目的だっけ?」から活動を見直し、キントーンによる情報共有で課題をクリア【岐阜市立徹明さくら小学校PTA】
岐阜市立徹明さくら小学校は、2017年に2つの小学校が統合してできた、児童数約300名の学校です。同校のPTAは、2021年度から活動の見直しを進め、ゆるやかな運営をめざしてきました。
運営にはキントーンを導入しています。どんなふうに使っているのか、同PTAの本部役員としてIT関連を担当してきた、山田英生さんにお話しいただきました。
山田英生さん/2児の父。徹明さくら小学校PTAで2023年度は会計を務める。リフレッシュ方法は野菜の千切りや風呂掃除。サイボウズ入社4年目のパラレルワーカー。
テキストを蓄積するから検索で簡単に情報を引き出せる
山田さんがPTAにかかわり出したのは、2020年暮れのこと。近所の公園で仲良くなったパパ友から「楽しいことを企画して、一緒にやろう」と誘われたのがきっかけです。
最初のうちは「この活動は何だろう」と戸惑うこともよくありましたが、まずはみんなに「どういう目的でやっているんですか?」などと尋ね、「相手を知る」ところからスタートしました。
運営本部の活動で感じた課題は、主に3つありました。ひとつは、会議や活動を直接会って行う前提だったので、たびたび学校に足を運ばなければならず、メンバーの負担になっていたこと。もうひとつは、他のメンバーが何をやっているかお互いにわかりづらい状況だったこと。3つめは、任期が終わる際の業務の引き継ぎに手間がかかっていたことでした。
そこで決めたのがキントーンの導入です。学校や本部役員同士のちょっとしたやりとりはLINEで行いますが、そのなかで残しておきたい情報や相談ごとが出てきたときは、キントーンに入力することにしました。「本部の部屋」「学年委員の部屋」など各委員会のスペースを作成し、スレッド機能を使って情報を残していきます。
イラストはフリー素材を利用している
学校側でPTAとの窓口になっていただいているのは校長先生と教頭先生で、お二人にはアカウントを作成しています。キントーンの中で連絡や相談をすることで、情報共有にもなっています。
教頭先生のアイコンはパンダマーク
運営本部の会議には、「議事録アプリ」を使います。スケジュール内の該当日時のところに、各会議の議題や関連する情報を入れていきます。
「キントーンに情報をためていると、すべてテキストで検索対象となるので、何か困ったことがあったときなど、すぐに必要な情報を引き出せます。スケジュールとして入力することで、翌年度に『去年の今ごろは何をしていたか?』を知りたいときも、一目でわかるようにしました」(山田さん)
一般の保護者に情報発信するときは、LINEの公式アカウントやメールを使い、逆に運営本部が保護者の意見を聞きたいときはGoogleフォームでアンケートを行います。アンケートで集まった情報はcsvなどの形式で、キントーンにいれ管理しています。
アンケートを行うときは、LINEや配信メールにリンクやQRコードを入れてフォームに誘導している
「キントーンを選んだのは、僕が使い慣れていたからというのもありますが、PTAでの活用事例が豊富にあり参照しやすかったことも大きな決め手になりました」(山田さん)
なお、導入するときは個人情報の漏洩を心配する声もあったそうですが、キントーンは銀行や自治体などでも使われていることや、USBメモリや紙で情報を管理するほうがリスクが高いことを説明したところ、納得を得られたということです。
さらに、この年度はちょうど本部役員が入れ替わり、新メンバーにはオンラインツールを使い慣れた父親が多かったことや、コロナの感染拡大の影響で役員が集まれなくなったことも、導入を進める大きな後押しになったと山田さんは振り返ります。
使いかたは一人ひとりに説明しなくて済むよう、動画に撮って「これを見てください」という形で共有したところ、大きな混乱はありませんでした。
「やらないこと」を決めることから始めた
PTAのやりかたを見直すにあたり、山田さんたち運営本部のメンバーが一番に着手したのは、各活動の必要性を見極めて「やらないことを決めること」でした。
「『前からやっていたことだから、これはやるんだよ』というToDoで身動きがとれなくなりがちだったので、まずは業務の見直しから始めました。これまでやってきたことを否定するのではなく、一歩引いて『そもそも、これはなんでやらなきゃいけないんでしたっけ?』というところから考えるのがポイントです。情報を集めてみんなで議論し、結論を保護者に共有して、また意見を募って決定していく、というプロセスを地道に地道に繰り返しました」(山田さん)
運営を「ゆるく」することも心がけました。「必ずやって」と強いるのでなく、手伝いなどが必要になるたび、その都度「やってもいいよ」と手を挙げてくれる人を募る形にしたのです。
運営本部も委員会もみんな、この3つの前提に立って活動をしているそう
実際に「やめたこと」を時系列でまとめました。まず定例会議については、オンライン(Zoom)での参加をOKにし、さらに「参加必須」もやめることにしました。役員の引き継ぎも、直接集まってではなく、オンラインでできるようにしました。
「会議などはあえてZoomの無償枠内(40分以内)で行うことで、時間が長引かないようにしています。キントーンの『議事録アプリ』で目的や議題を共有しているので、話が早く済んだら会議は早く終わろう、という形をとりました」(山田さん)
以前は保護者に強制的に割り振っていた旗当番も、やめました。みんなで話し合った結果、「このまま続けるのは難しいね」ということになったので、地元のシニアボランティアのかたたちや、コロナでリモートワークになり登下校に付き添うようになった保護者たちに協力をあおぎ、できる人で子どもの見守りを行うことにしたのです。
さらに、年度初めに行ってきた「PTA総会」も、みんなで集まるのをやめにしました。紙資料を大量印刷する代わりにPDFデータを配布し、挨拶や説明は動画で撮影してYouTubeにアップすることにしました。会員からの意見や回答は、Googleフォームで集める形です。議論を経てベルマーク委員も廃止して、運営組織を小さく小さくしていっています。
このようにして、山田さんが当初感じた3つの課題は解決していきました。役員が直接学校に足を運ぶことは減り、他のメンバーがやっていることをお互い把握できるようになり、任期が終わるときの業務の引き継ぎもスムーズになったということです。
「やめた」分、これからやっていきたいことも
今後やりたいことも、いくつかあります。
「2023年度は、運営本部と執行委員の壁をなくしていけたらと思っています。いろんな委員会でやってきたことをまとめたりなくしたりして、やることを限定したうえで、本部で統合してもいいんじゃないかなと。また学年ごとの委員は、活動の都度募集するようにしていく予定です」(山田さん)
「PTAは必要と思いますか?」「重要と思う業務は?」などを尋ねた保護者アンケートの集計結果
アンケートで集まった保護者の意見。「随時募集の方法はとても良い」「行事のボランティア参加募集はとても良い。参加しやすい」など喜びの声も
キントーンの運用をしてくれるメンバーを増やすことも、今後の課題です。現在は5人しかいないため、もう少し増やしておきたいところです。そこで、たとえば「先生の業務改善」をテーマに保護者向けのワークショップを開催して、キントーンの使いかたをみんなに体感してもらうことなども考えているそう。
「大人と子どもがいっしょにワイワイできるようなイベントもやっていけたらと考えています」と、山田さん。業務を見直して絞り込んだ分、これからは楽しいことも増やしていきたいということです。