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LGBTQを含めたすべての子どもがありのままで大人になれる未来へ、教育・キャリア事業のkintone活用【認定NPO法人ReBit】

  
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今回登場するのは「LGBTQを含めた全ての子どもがありのままで大人になれる社会」をめざす、認定NPO法人ReBitです。2009年に早稲田大学の学生団体として始まり、2014年に法人化して、現在職員数は14名。学齢期~青年期の子どもたちに向け「教育事業」と「キャリア事業」を行っています。

教育事業では、子どもたちの学校現場での困りごとを解決するため、教職員への研修や児童生徒への授業、教材作りなどを続けてきました。


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キャリア事業は、子どもたちが「大人になってからも自分らしく働き、生きること」を信じられるようにと始めたものです。当初は学生の就活支援に主軸を置いていましたが、「その人のまま働く」ことは誰にとっても実現されたいビジョンであるため、現在はより幅広く展開しています。

たとえば、「LGBTQの従業員も働きやすい職場とはどんなものか」を企業と共に考え、必要となる制度やガイドライン、啓発資料(ハンドブックなど)を作成することもあれば、企業が提供するサービスを、よりSOGI(性的指向・性自認)インクルーシブにするための伴走支援を行うこともあります。

企業研修も、事業の大きな柱の一つです。LGBTQやダイバーシティ&インクルージョンを学ぶための機会づくりや、実際に働く人たちが集まって話をする「ダイバーシティキャリアフォーラム」の開催なども手掛けます。

最近はさらに、就労移行支援を行う「ダイバーシティキャリアセンター」という福祉事業も始めました。これは複合的(ダブル)マイノリティと呼ばれる、精神障害、や発達障害があるLGBTQの方々も安心して福祉サービスを利用できるようにするための取り組みです。

LGBTQであることは障害ではありませんが、現状の社会でLGBTQはうつを経験する人の割合が高く、メンタルヘルスが悪化しやすいことがわかっています。ところがLGBTQが福祉や行政のサービスを受ける際は、ハラスメントや困難を経験することがあり、本来頼れるはずのセーフティーネットが使えず、生きること自体に希望が持てなくなる人もいます。「ダイバーシティキャリアセンター」は、LGBTQが福祉や行政のサービスに安心して頼ることができるモデルケース化を進めるものです。

さて、そんなReBitで、kintoneがどのように活用されているのか? 事務局長兼キャリア事業部シニアマネージャーの中島潤さんと、教育事業部でファンドレイジングを担当しつつ、kintoneでアプリを作成するWさんに、教えてもらいました。

案件やファンドレイジングの管理にkintoneを活用

ReBitでは現在、主に事業の案件管理にkintoneを使用しています。以前は「何月何日に、こういったお客様の案件がある」といった情報をExcelで一覧表にしていました。手書きのものをデータ化したような形です。

中島さんがReBitにかかわりはじめた2017年頃から、特にキャリア事業の案件が急増したため、「担当が誰で、何月何日にどういった内容・金額でお約束しており、現時点で何が対応済いるか」といった情報を管理する必要が生じ、kintoneが導入されました。kintoneでの案件管理がすっかり定着したのは、2019年度頃だったとのこと。

Wさんはkintone導入による変化を、このように振り返ります。

「Excelのときと比べて、kintoneではまとまった形でデータを出せるようになりました。たとえばご依頼いただいた学校の情報や、どういった地域でニーズが多いかなどの情報を把握したいときに助かっています。情報が集約されていることにより、今後の計画を立てやすくなりました」


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最近は案件管理のほか、教育事業のファンドレイジング(寄付)の管理においてもkintoneを活用しています。法人からの寄付について、kintoneで管理することで、状況把握しやすくなり、企業様とのコミュニケーションもスムースになりました。


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また、以前は各所にちらばったデータを参照しなければならなかったが、いまはkintone上で受領書の発行状況と情報をリンクさせることにより、スムーズに確認できるようになったとのこと。

この春からは会計システムを新しいものに変更するため、kintoneとどのように連携、役割分担するかを整理中です。

たとえば講師が学校に研修または授業をしに行く場合、メインとサブの担当は誰か、対象者は管理職か、一般教職員か、児童生徒かなどといった詳細な入力までは、新しい会計システムでカスタマイズできません。こういった情報は、kintoneで管理することになる見込みです。

一方「ダイバーシティキャリアセンター」の事業は、福祉領域に特化したシステムを導入して管理を行っています。「どなたが、いつどんなサービスを利用したか」という情報を入力すれば、請求まで一気通貫できるものです。

『誰でもここを見ればわかる』という状態を作る

お話をうかがったところ、ReBitではかなり積極的に、さまざまなシステムを導入しているようです。どういった理由があるのかと尋ねると、中島さんはいくつかの背景を説明してくれました。

「私たちはコロナの前からリモート勤務をしており、そのために必要なシステムには惜しまず投資していこう、という前提があったことも影響しているかもしれません。

また『本来業務に注力できる状態』を作っていくため、人為的な調整が発生してしまう工数はなるべく減らし、『誰でもここを見ればわかる』という状態を作ることをめざしてきました。そうやってシステム化しておいたほうが、新しい職員が入ったり規模が拡大したりしたときに『このフローでやっているので、あなたにはここをお願いします』とお伝えしやすくなります」

さらに、システムを得意とする職員がアプリ開発をしてきてくれたことも大きいようです。現在はWさんがその役割を担っており、中島さんなど他の職員が「こういうことをしたいと思うんです」と伝えると、Wさんが「けっこう楽しみながらアプリを作ってくれる」のだとか。Wさん本人は、どう思っているのでしょうか?

「中島が言う通り、楽しいんですよね(笑)。kintoneは、やりたいことを実現するうえで、非常にスムーズに設定や編集ができる。『あ、ここがこうなるっていうことは、ここをもうちょっとこうしたら、もっと使いやすいかも』みたいな工夫ができるから、いつもワクワクしながら『今度はどんな感じにしようかな』という感じでやっています」

内部でアプリが組めることにより、メンバーが意見を言いやすい雰囲気も生まれているようです。

「与えられたアプリケーションやシステムを使っていると、多少『不便だな』と思っても、我慢してそのまま使うことになりがちですよね。でも『これ、誰々さんが作ってくれたアプリだよね』とみんながわかっていると、『ここって、こういうふうにならないですか』とか『○○ってできませんか』など、『こうしたい』という要望が出てきやすくなるところがあるのかなと思います」(中島さん)

「内部で作って自分たちが使いやすいようにできるというのは、日々の業務のストレスがないという点でも大きなことだと思います。細かいことでも『もうちょっとこうだったらいいのにな』と思うものが積み重なると、ストレスが溜まる。それが実現されていると"余計なストレージ"を使わなくて済むので、『もっとこうしたい』『みんなでこうしよう』といった方向に進んでいく。kintoneが潤滑油になっていると感じています」(Wさん)

職員以外の仲間たちもかかわりを実感できるように

最後に、今後のことも聞かせてもらいました。まず、いま拡大中の「ダイバーシティキャリアセンター」の福祉事業は、これからますます広がっていく見通しです。

研修やコンサルテーションは、現在は企業を対象とすることが多いのですが、最近はパートナーシップ制度の導入など自治体のお取り組みが広がってていることもあり、自治体向けの伴走も増えていきそうです。

さらに今後は、学校や企業に授業・研修に行くだけでなく、先生自身が授業をできるようにしたり、企業の担当者が自主的に施策を考えていけるようにしたりするための育成プログラムの提供も検討しているということです。

「システムの導入は、ReBitが大切にしている価値観のひとつでもある『コレクティブに協働し、あらゆる枠組みを超えて課題に取り組む』というテーマに入ると思います」と、中島さん。事業の必要性や優先順位を判断するときも、「コレクティブインパクト」「連携」「チームで進む」といった大切にしたい軸に立ち返って考えるのだそう。

kintoneの導入を決めてくれた職員はもういないんですが、そういった多くの人の行動の積み重ねで今の自分たちがあることを、忘れずにいたいと思います。協働している講師のメンバーや、ご一緒させていただく企業の方々、ご寄付やご支援をいただく方々など、職員以外の皆さまも『私はこういうふうにReBitの活動にかかわっている』と実感を持っていただけるように、今後もしていきたいです」(中島さん)

チャレンジを楽しみ活躍の場を広げていらっしゃる貴重なお話をありがとうございました!