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準備期間はコロナの真っ最中。高校生による国内最大規模の芸術文化の祭典を支えたkintone活用法とは【とうきょう総文2022】

  
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とうきょう総文2022グランドフィナーレの様子

全国から各都道府県を代表する高校生が集結し、美術作品の展示や演劇・音楽の舞台発表などを行い「文化部のインターハイ」ともよばれている全国高等学校総合文化祭。

毎年夏休みに、観覧者を含めると10万人規模で開催される本イベントは、都道府県持ち回りで開催され、生徒実行委員が主体となり大会を創り上げます。

2022(令和4)年に東京都で開催された第46回全国高等学校総合文化祭「とうきょう総文2022」では、都内の学校に在籍する生徒実行委員とミュージカルキャストなど総勢400人以上の運営メンバーの情報共有に、kintoneが活用されました。

2023(令和5)年2月、東京都教育庁指導部主任指導主事の堀口 俊英さんと同 指導主事の神田 実季さんに、運営でのkintoneの活用についてお話しいただきました。

事務局、生徒実行委員、ミュージカル関係者ら400人以上で活用

東京都の高校生が自ら大会を創り上げ、全国から集まる高校生とともに芸術文化の魅力を国内外に届ける「とうきょう総文2022」。

この祭典を準備段階からスムーズに運営するには、実行委員会事務局と都内の学校に在籍する生徒実行委員との間で効率良く情報共有ができるオンラインツールが欠かせません。そこで事務局が導入したのがkintoneでした。

「サイボウズ製品を安価に利用できる任意団体向けの『チーム応援ライセンス』の中で、当初はスケジュール管理がしやすいグループウェア 『サイボウズ Office』の導入を考えていました。しかし、ユーザーが300人を超えることが予想されたため、上限が900人のkintoneを導入することにしました。最終的には、生徒実行委員300人以上、ミュージカルキャスト約40人、事務局が約50人と、常時400人以上で稼働していました」(堀口さん)

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東京都教育庁 指導主事の神田 実季さんと同 主任指導主事の堀口 俊英さん

堀口さんが管理者となり、書類選考で決定した生徒実行委員に決定通知を送る際、kintoneのログインIDや初期パスワードを記載した用紙を同封。通知を受け取った生徒が個別にログインする形をとりました。

「時期的に、生徒1人1台のモバイル端末や高速通信環境を整備するGIGAスクール構想までのはざ間で、パソコンを所有していない生徒もいました。その生徒には教育委員会からパソコンとルーターを貸し出し、生徒全員の通信環境を保障しました。スマホを持っている生徒には、通知機能があるkintoneモバイルアプリを利用すると便利であることも伝えました。多くの生徒はパソコンとスマホ両方で使っていたようです」(堀口さん)

kintoneでは業務に必要なアプリを必要なだけ作成できるため、6委員会(総務委員会、総合開会式委員会、パレード委員会、広報イベント委員会、国際交流委員会、記録・編集委員会)ごとに連絡ボードアプリを作成。書類を添付したり、業務や打ち合わせ日程の連絡を行ったりして、該当する生徒に必要な情報が届くようにしました。

「準備期間にコロナ禍が重なり、対面での打ち合わせができないためオンライン会議を行うことに。kintoneにMicrosoft Teamsのオンライン会議のURLを掲示して、『ここから会議に入ってください』という周知にも使いました。

kintone導入前は、生徒実行委員が所属する各学校の校長先生宛に伝えたい事がらをメールで送り、校長先生→担任→生徒と3段階で情報を届けていたのですが、事前に校長先生に『事務局からの連絡は生徒に直接させていただきます』とお伝えしたうえで周知したので、とてもスムーズに運営できました」(堀口さん)

アプリの作成は事務局主導で行っていましたが、生徒から「連絡ボード以外で、生徒同士で意見を交換できるような場が欲しい」という意見が出て、各委員会用に「コミュニケーションボード」を準備しました。

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生徒同士で意見を交換できる「コミュニケーションボード」アプリの一覧画面


「コミュニケーションボードは、今思っていることや、『今後こんなことをしたらいいのでは』などのアイディアを自由に出せるオープンな場にしました。発信するにあたっては、生徒に『読む相手の立場に立ち、読んだ相手が悲しい思いをしないような内容でお願いします』と事前に説明してから使い始めてもらうようにしました。その効果か、トラブルなども起きず、『他の人の意見をリアルタイムで知ることができてためになりました』『みんなが一生懸命やっている様子が伝わってきて、自分も頑張ろうと思えました』など、前向きな声が多く聞かれました」(神田さん)


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「コミュニケーションボード」アプリの詳細画面、稽古の振り返りについてコメント欄で意見が交わされている

コロナ休校時、ミュージカルキャストのオーディションはkintoneを活用

「とうきょう総文2022」では、総合開会式において、高校生キャストがプロの演出家の指導を受けて創り上げたオリジナルミュージカルを上演しました。当初の予定では、面接や実技等による対面でのオーディションを予定していましたが、オーディションの時期とコロナによる休校が重なり、対面によるオーディション開催が不可能となってしまいました。そこで大活躍したのが、kintoneです。

「オーディションに応募してきた生徒にkintoneのIDを配り、自宅で歌やダンスを1分ほど動画で撮影してもらい、動画のデータをkintoneに提出してもらいました。それらの動画を演出家に見てもらって、kintone による"オンライン審査"により、無事にキャストのオーディションを終えることができました。応募生徒から、『対面審査だと緊張してしまうところ、オンライン審査で普段の成果を見てもらうことができて良かったです』という声も聞かれましたね。決定後はkintone上でキャストのグループもつくり、情報共有を行うようにしました」(堀口さん)

ミュージカルの台本は、演出家とキャストが「高校生活」をテーマに協働で創り上げていきました。そこで、演出家が「高校生活の中で悩んでいること」「嬉しかったこと」などのテーマをkintone上に提示し、アプリに書き込んでもらいました。


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演出家の先生からの課題もkintoneのアプリで提示された


「プライベートな内容になることも多いので、書き込んだ内容は他の生徒には見られないように設定し、書いた生徒は演出家から直接コメントをもらえるようにしました。回を追うごとにたくさんのコメントが出るようになり、台本に取り入れられていきました」(堀口さん)


稽古のスケジュールもkintoneで共有し、その日に参加できるメンバーに応じてダンスの練習をしたり、ソロの練習をしたりなど柔軟に対応できました。

「健康管理についても、その日の体温や体調について簡単に記入できるフォーマットを作って入力し、編集機能を使って個々に記録を更新してもらうことで、体調管理を促しました」(堀口さん)


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体温や症状、家族の健康状況などが毎日記録されている

アイディアを形にしていくツールとしても活用

2021(令和3)年10月のプレ大会終了後、当時の3年生が引退。生徒実行委員の入れ替えに伴い、全体を総括する委員長を選出する必要が生じました。

「この時期もコロナが流行していて対面での委員会開催の機会が限られていたため、投票機能を使ってオンライン投票することに。委員長、副委員長の立候補者を募り、1分程度で決意表明の動画をkintoneにあげてもらって生徒実行委員全員に見てもらい、投票してもらいました。票決もあっという間でしたね」(堀口さん)

また、会期中は参加校の生徒や視察者に向け、5種類の「おもてなし弁当」を用意。メニューは総務委員会、お弁当のパッケージは広報イベント委員会の生徒が考えました。

「パッケージデザイン案は、広報イベント委員会の生徒がkintoneにあげて、それを生徒同士で見ながら『ここは⚪⚪にしたほうがいいよね』などと意見を出し合い、パソコンでのデザイン操作が得意な生徒がその場でササっと色を変えたり大きさを変えたりしながら仕上げていきました。kintoneを使うことで、異なった場所にいる生徒同士が同時に同じものを見ながらプロジェクトを進められたのは、とても良かったと思います」(神田さん)


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お弁当のパッケージデザインを考案するアプリの一覧画面


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打ち合わせの内容やデザイン案がアプリで共有され、コメント欄で意見交換がされている


コロナの状況を鑑みプレ大会は無観客開催でしたが、本大会は観客をお迎えしての開催が実現。総合開会式やパレードを始め、全ての開催部門でオンライン配信も活用しながら、生徒の参加は約2万人、観覧者は2万人を超え、大盛況のうちに幕を閉じました。

「東京都で初めて開催された一大イベントでしたが、お客さまをお迎えした形で無事開催することができ、本当に良かったと思います。事務局としては、kintoneは情報の一元化や大人数の出欠管理、健康管理に加え、さまざまな情報を必要なときに取り込んだり他の職員と共有できたりする点で、非常に便利なツールだと改めて感じています」(堀口さん)


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「生徒たちからは、『自分のタイミングで意見をあげたり投票できたりするのがとてもやりやすかった』という声も聞きました。グループウェアを使いこなし、さまざまなアイディアを持ちよりプロジェクトを進める生徒たちの様子をとても頼もしく感じました」(神田さん)


堀口さん、神田さん、貴重なお話をありがとうございました!