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誰も置き去りにしない自治会のデジタル化とは?【東京都内自治会】

  
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チーム応援カフェVol.2のテーマは自治会。東京都内のある自治会で2018年に「サイボウズ Office」を導入した元自治会総務部長で合同会社アクアビット代表、kintoneエバンジェリストの長井祥和さんに導入後の変化やIT活用の可能性についてお話しいただきました。

総務部長になって知った自治会運営の大変さ

長井さんが自治会の総務部長になったのは2012年4月。当時お台場のお客さま先に常駐する仕事をしていて、自治会の業務との両立はグループウェアがないととても無理な毎日でした。終電で帰宅したのち、町内のかたが亡くなったことを知り、お悔みの文章を作成して深夜1時半から40数班の班長宅へポスティングしたこともありました。

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自治会は作業量が多く、役員は仕事をしているかたばかり。長井さんは「ITが必要ですよね」と無料グループウェア「サイボウズLive」を役員同士の連絡に導入することにしました。

周囲を説得するには、2点にしぼってお伝えしていたと言います。

「会報に総務部長としてITの必要性を書きました。ITが苦手な人を見捨てませんということを何度も書きました。役員の負担がどう減るかを定量化し、これくらいの時間を減らせます。役員のなり手がいなくなることを防ぐためにもIT化が必要ですと伝えました。」

自治会の役員は1年で交代しますが、長井さんは数年間、新役員へのシステムへの招待や説明を担当。サイボウズLive終了にあたり、代替サービスの選定に入る2018年にはIT導入への抵抗感は減っていました。

「自治会は、作業が明確で導入する目的が決めやすく、削減時間も算出可能です。紙ベースでの情報流通は遅いので改善が必要だねと理解も得られやすくなっていました。」

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一方で逆風もありました。「プライベートな情報をクラウドにもたせていいのだろうか?」との不安や新たな支出へ理解が得られにくい面もあり、年齢層が幅広いので「不公平が生じるのでは?」といった声も。そこで使う対象は役員限定として検討することにしました。

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20ぐらいの代替サービスを検討するなか、サイボウズLiveからの移行が容易で操作性に変化が少ないこと、サポート体制があること、300ユーザーで年額9,900円というチーム応援ライセンスがあることから「サイボウズ Office」を選びました。

掲示板で議題や原稿を共有

「サイボウズ Office」には豊富な機能がありますが、役員会の議題やお知らせの原稿を共有する目的として掲示板機能だけを利用しています。自治会の作業量は膨大ですが、すべてオンラインに移行すると難しくなる可能性もあったので、機能を絞ってシンプルに利用しています。

コロナをきっかけにIT化が加速

「2020年は、コロナに翻弄された1年でした。」

自治会館に集っての役員会や総会が開催できなくなり、さまざまなイベントも相次いで中止。さらに、30年続いている自治会なので会員の年齢の偏りが発生し、改革が必要なタイミングでもありました。

そこで自治会館に無線LANを整備し、「サイボウズ Office」に加えZoomも導入してオンライン役員会の開催に踏み切りました。さらに、会長さんのもとで地区や班編成の再編も実現。市のグラフ誌にも取り上げられたそうです。

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自治会ではkintoneも使える

kintoneエバンジェリストの長井さんは、自治会で導入するツールにはkintoneもおすすめと言います。まず「サイボウズ Office」との大きな違いは上限ユーザー数です。

「例えば全世帯に配布している回覧板の情報もIT化したいという声もありますが、私たちの自治会は約700世帯なので、300ユーザーまでの「サイボウズ Office」では全世帯には配れません。でもkintoneならチーム応援ライセンスで900ユーザーまで年額9,900円なので、全世帯で利用できます。自分たちのニーズにあったアプリを作成して情報を管理でき、さらに「サイボウズ Office」の掲示板のようなコミュニケーション機能もあるので、会員名簿や備品の管理、自治会からの配布物の管理など、効率的に一元管理をすることができます。」

防災準備にも役立つkintone

自治会で防災に備えるという観点からも、kintoneのアプリは使えると言います。「例えば保存食の期限管理。アプリに登録しておけば、期限が迫ってきたら通知が届くように設定できます。メールワイズ連携プラグインを利用して災害発生時に一斉メールを送れますし、他にもLINEやSMSへの発信もできます。高齢者には、LINEもメールも使わないけれどSMSなら使っているよ、という人も意外といらっしゃいます。」

また、どこにどのような家族構成の世帯が住んでいるかを把握しておくことも、自治会の大切な業務です。kintoneで世帯情報を管理し「カンタンマップ for kintone」(あっとクリエーション提供)で地図と連携することも可能です。

参考:サイボウズ 災害支援ライセンス

自治会では、役員のITスキル向上が課題になることもよくあります。

「スキルアップのために個別にフォローし続けるのは難しいと思います。それより、自治体や役場のかたと連携して自治会向けの勉強会を開催することを提案します。」長井さんは、依頼があれば各地デモを交えた使い方セミナーや動画マニュアルの作成を行えるそうです。

Q&Aタイムではたくさんの質問が

Q&Aタイムではたくさんの質問に回答いただきました。そのほんの一部をご紹介します。

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Q. ITが苦手な会員にはどう対応したらよいのでしょうか?

A. 懇切丁寧に教えるのがいいと思いますが、ある程度やってみて厳しかったら、無理にやらずに紙との併用でいかがでしょう。近隣にIT化できる人がいて、そのかたからピンポーンとチャイムを鳴らして訪問いただき、アナログな形で伝達するのでもいいのではないでしょうか?

Q. ファイルサーバーとして使っています。ワークフローとしても使おうと思いますが、他に何かいい使いかたはありますか?

A. 掲示板で議題についてやりとりするとよいです。イチから話すのではなく、ある程度方向性を定めたうえで集まることができます。市町村からの依頼ごとも誰がいつ何をやるか、カレンダー機能やTODO機能を備忘録的な機能としてお使いいただけます。ワークフローとして使うときは、承認者を並列して設定することをおすすめします。

Q. 役員の引き継ぎをスムーズに行うにはどうしたらいいですか?

A. まず、導入初年度に作った運用に関するドキュメントは、しっかり残すことが重要で、大前提です。そのうえで、JavaScriptによるカスタマイズはメンテナンスの難易度が高くなるため、しないほうが賢明です。kintoneの機能を拡張するプラグインを活用すれば、ノンプログラミングでメンテナンスもしやすくなるのでおすすめです。

Q. 自治会のIT担当者に向く人材は?

A. 面倒くさがりの人です(笑)。アナログで作業し続けるのが面倒だからデジタル化してラクしたい、だから推進できるのだと思います。あとは新しいもの好きな人も向いていますね。

Q. 外国人の自治会員さんとの交流で活用したいと思いますが、効果的な使いかたへのアドバイスをお願いします。

A. 残念ながら、私の自治会では経験がありません。私の娘は、翻訳ツールなどルを駆使して、外国人のかたともインターネット上で交流しているようです。気軽に書き込めるコミュニティを作って、そこにお悩みなどを書き込んでもらうのはどうでしょうか。


自治会のIT化には、対象が役員のみなのか全員なのか、どのような業務をITで行うかによって、いろいろなスタイルがあります。長井さんのようなさまざまな解決方法や引き出しを持っているかたの協力で、各地のニーズに応じたデジタル化に近づけるのではないでしょうか。

関連リンク
長井祥和さんの自治会事例発表資料