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おたよりのペーパーレス、PTA活動の負荷とコストを削減し教育長賞を受賞――【仙台市立八木山南小学校PTA】

  
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電子化で「できる人ができる時にできることをできる場所で」取り組めるようになったことをパネルで紹介。小中学校合わせて約200校から選ばれた。


ペーパーレス化に取り組んだ実績から、仙台市PTAフェスティバルで「仙台市教育長賞」を受賞した仙台市立八木山南小学校PTA。2019年春から「サイボウズOffice」を導入し、「YAGINET(ヤギネット)」と命名しました。2020年2月現在、263名の児童の保護者であるPTA会員の約9割が登録しています。

1年前までは紙のやりとりが基本だったという同PTAは、どのようにシステムを導入し、みんなが使えるようになっていったのでしょうか? 旗振り役を務めたPTA会長の伊藤宏明(いとう ひろあき)さんと、YAGINETの導入実務を担当した副会長の八巻孝(やまき たかし)さんらに、詳しくお話を聞かせてもらいました。

個人情報保護と参加の負担がIT化のきっかけに


伊藤さんが副会長となった2017年春、PTAの情報共有は、主に紙で行われていました。PTA室にきて紙の書類を手渡したり、内容を確認する際も、紙を撮影した写真データが送られたりしていました。個人情報を含むデータもあるため、データをUSBメモリで持ち運ぶことは避けていたといいます。

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PTA副会長の八巻孝さん(左)と会長の伊藤宏明さん(右)。伊藤さんは同校の卒業生でもある。


YAGINETをつくったきっかけは、主に2つありました。ひとつは2017年春から改正個人情報保護法が施行されたこと。電話番号などの流出を心配する声もあがっていたため、これまでのようにPTAで名簿を作成・配布するのではなく、個人情報を伏せたまま保護者同士で連絡を取り合える新たな方法が求められていました。

もうひとつは、PTA活動が会員家庭の負担になっていたことです。「無理をしている状況では続けていけない。家や職場などどこからでも空いた時間にPTAに関われる仕組みが必要だ」と伊藤さんは感じていました。

「PTAは保護者と先生が協力して学習環境を整えていくことを目的としている組織なのに、書類のやりとりが煩雑で、義務的にこなす状況になっていました。それで、私が会長になったおととし(2018年)の夏祭りの準備中、ITに詳しい八巻さんに相談してみたんです。そうしたら『できるよ』って言ってくれて。さらに元PTA会長の先輩も後押ししてくれたので、急に話が前に進み始めました」(伊藤さん)

八巻さんは伊藤さんからの相談を受け、さっそくいろいろなITツールを調べてみました。そのなかで、最も直感的に使えて導入もしやすいと感じたのが「サイボウズOffice」でした。

導入前にネットが見られるかを確認


導入にあたって通信環境についてのアンケートをとったところ、全世帯が「なんらかの形でインターネットが見られる」ことが確認できました。

2カ月ほどトライアル環境で準備をした後、2月の運営委員会でYAGINETについて説明し次年度に使うことについて賛同を得ました。2019年4月のPTA総会で正式に合意をえます。八巻さんは総会でYAGINET専任の副会長に就任しました。

八巻さんは、YAGINETを始めるにあたりPTAのGoogleアカウントをつくり、問い合わせ用のメールアドレスや会員情報を収集するためのGoogleフォームを用意しました。

「紙で情報を集めるとデータ化が大変だし入力ミスの危険もあるので、会員のメールアドレス・名前、児童の名前・学年を、各自フォームから記入してもらいました。フォームのURLは、スマホからでもアクセスしやすいようにQRコードをプリントで配布しました。」(八巻さん)

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ログイン情報を送った後、打合せの場や案内プリントで利用を促し約9割の会員がYAGINETに登録できました。現在YAGINETには、PTAだけでなく学校からのお知らせも、一部掲載しています。

「学校は子どもたちに紙のお手紙を渡していますが、子どもがなくしてしまって親の手元に届かないこともあるので、なるべくYAGINETに残っているようにしたいなと。PTAの予定だけでなく学校の年間行事も全学年分、YAGINETのスケジュールに登録してあります」(伊藤さん)

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教頭の上原広樹先生 


先生からもYAGINET導入は歓迎していただけました。

「これまでPTA会員が困っていたことが、電子化によって改善されるなら、学校としては歓迎です。不特定多数の方が閲覧できるホームページとは違って会員しかアクセスできない仕組みなので、個人情報の面でも心配がないとわかりました。」(上原教頭)

台風やクマ出没時の緊急連絡にも活用


導入から約1年が経ち、YAGINETは定着しつつあります。

「役員の方たちが頑張って使ってくれています。使ってくれた人は便利さに気付いてくれているようです。一般会員の方たちは見てくださっていますが、自分から情報を発信したり意見を言ったりはまだ少ないです。そこはこれからですね。」(伊藤さん)

現状最もよく使われているのは「メッセージ機能」です。学年や委員会ごとにグループでやりとりが行われています。会議の出欠アンケートを取るときにも活用されています。 便利な点は、情報を見たかを確認できるので、見ていない人には別の方法で連絡を入れられることだそう。

掲示板はイベントの告知などに利用。ファイル管理では学年や委員会ごとに資料を共有できるようにしました。

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PC画面のトップページ


YAGINETは緊急・災害時も活躍しました。昨年は台風などによる大雨災害が多く、避難勧告が出されましたが、学校の一斉メールは学校にあるパソコンからしか発信できないため、YAGINETから情報を流したほうが早かったのです。

「台風で避難勧告が出た際に、学校が避難場所ではない(注:土砂災害避難警戒区域にあるため)ことを周知したときや、学校の裏山にクマが出たときに、学校からの依頼を受けて、YAGINETから情報を発信しました。

初年度は校長、教頭、教務主任の3人だけがアカウントを持っていますが、いずれは担任の先生にも入っていただいて学年の発信に活用いただきたいと思っています」(伊藤さん)

「学校いじめ防止基本方針」を改定するにあたり保護者からの意見をもらう必要があり、「カスタムアプリ」機能を使ってアンケートを集めたこともあります。紙で回収すると誰が書いたものかわかってしまう可能性があったため、YAGINETで完全に匿名のアンケートをとれないかと学校側から相談があり、これに応えたということです。

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YAGINETの導入で紙代・インク代は半減した。

先生たちの働き方改革をバックアップしたい


今後YAGINETでやってみたいことは、いろいろあります。ひとつは、保護者から学校への問い合わせ等を受ける一次窓口をYAGINETに設け、先生たちの働き方改革をバックアップすること。

また今年度は、一年間のPTA活動を振り返る会員アンケートを紙で実施しましたが、来年度はYAGINET上で行いたいと考えています。さらに、保険等の申請書類のチェックをする際には、「ワークフロー」の機能を活用することを検討しているそう。

会員世帯のなかには「子どものことは祖父母に頼んでいるので、紙で情報をもらえたほうがありがたい」という声もありました。現在PTA室には多機能プリンタを設置して、希望者は誰でもプリントを入手できるようにしてあります。今後もさまざまな状況の世帯をフォローしていくため、方法を模索中だということです。

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YAGINET関連設備としてクラウドへダイレクトにPDFがスキャンできるスキャナやWi-Fiルータを設置。


PTAフェスティバルで受賞し、他校からも「導入したい」という相談を受けるようになるなか、PTA同士の連携や地域活動にもグループウェアを使ってみたいと考えているそうです。

「YAGINETを導入して約1年弱でここまで来られたのは、上出来かなと思っています。スマホで登録するときにつまずいたとか、印刷がうまくいかなかった、といった相談も寄せられる一方で、『助かる』『応援している』という声もいただくので、これからも丁寧に説明しながら、じっくりと周知を続けていきたいと思います」(伊藤さん)

保護者向けに卒業式のライブ配信を限定公開



取材後、新型コロナウィルス対策で休校措置となるなかYAGINETの新たな使い方を教えていただきました。

同校の卒業式は、卒業生と先生のみで開催されることになりましたが、伊藤さん、八巻さんや写真、映像、デザインのプロ技術をもつ保護者らの臨時チームが結集し、雰囲気を伝えられればと保護者向けにライブ配信を実施。YAGINETの6年生保護者のみがみられる掲示板にYouTubeの限定公開リンクを貼るという方法でセキュアにご覧いただけたそうです。

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ライブ配信に必要機材についてはサイボウズ社員の松井隆幸のnoteが参考になったそうです。


伊藤さん、八巻さんらのきめ細かなフォローで、YAGINETはこれからもますます、進化していきそうです。

お話をありがとうございました!