Case
事例
目指すは「混ざり合う社会」学校向けスポーツ体験事業で kintoneを大活用
スポーツの普及にとどまらず、「視覚障がい者と健常者が当たり前に混ざり合う社会」を目指して活動する、特定非営利活動法人日本ブラインドサッカー協会。障がいの有無にかかわらず生きがいをもって生きることに寄与することをミッションとする活動において、どのようにkintoneを活用しているのか、教えてもらいました。
学生時代にブラインドサッカーと運命的に出会ったという松崎 英吾さん(専務理事)
「スポ育」を担当する藤牧 花名さん(事業推進部)。kintoneをより使いやすくするため日々コツコツと改善中
目が見えない人、見える人がチームワークを発揮する競技
シャカシャカと音が鳴るボールを使い、アイマスクを着けたフィールドプレーヤーが音を頼りにゴールを奪い、守る、ブラインドサッカー。パラリンピックの種目にもなっているので、「なんとなく知っているよ」というかたも多いかもしれません。
サイドライン沿いに設置されるフェンスや、ボールを持つ相手プレーヤーへ向かって行く際の「ボイ!」というかけ声など、ルールの随所に工夫がある(提供:日本ブラインドサッカー協会)
ブラインドサッカーは、目の見える人と見えない人がチームワークを発揮するスポーツです。ゴールキーパーは晴眼者(目が見える人)または弱視者が務め、相手ゴールの後ろで位置を知らせるガイドや、プレーヤーに指示を出す監督も、晴眼者が入ります。
フィールドプレーヤーは4名。日本国内ではアイマスクを着けた晴眼者もプレーできる。国際競技大会はB1(全盲~光を感じられる)と認定されたプレーヤーのみ出場可能(©️Haruo.wanibe/JBFA)
現在、23の都道府県で35クラブが活動している
「混ざり合う社会」の実現を目指し、スポーツ体験を提供
松崎さんは、同協会では「見えない人たち向けの事業」だけでなく「見える人たち向けの事業」も行っている点が大きな特徴だと話します。
「私たちはブラインドサッカーを通じて『視覚障がい者と健常者が当たり前に混ざり合う社会の実現』を理念として掲げています。スポーツの普及や強化は、視覚障がい者の『社会的な不利』にアプローチするためのある種の手段と考えています」
図の三角形の部分が、主に視覚障がい者の競技者を中心とした事業領域。日本代表の育成や普及活動、大会運営、各地の自治体との連携等も行っている
そこで日本ブラインドサッカー協会は、D&I(ダイバーシティ&インクルージョン)事業として、晴眼者に向けてスポーツ体験等を提供しています。学校(小中高)向けの体験授業「スポ育」(スポーツ×教育)や、大人向けの「OFF T!ME(オフタイム)」、法人向けの「OFF T!ME Biz(オフタイムビズ)」といった事業です。
D&I事業への問い合わせ件数は年間約500~800件。このうち約半数が申込みにつながっています。
学校や外部講師との情報共有にkintoneが欠かせない
kintoneは協会のさまざまな部門で活用されています。
管理系の部門では、勤怠管理、押印申請、契約管理、倉庫備品管理(資産台帳)、グロサリー(社内用語集)などに。営業部門では、スポンサー企業や企業研修などの案件管理や、外部連携先との情報共有などにもkintoneを使っているそう。
体験事業を行うD&Iグループでは、スポ育や講演管理など全般的にkintoneを活用しており、特に学校から申し込みを受け、組織内外の講師等と情報共有する際に役立っているとのこと。
「スポ育では、元気なクラスや大人しいクラス、最近では日本語の理解が難しい生徒が在籍するクラスなど、さまざまな個性や特性をもつ学級や参加者に体験を提供しています。子どもたちが事故や怪我なく、多くの学びや気付きを得られるようにするため、講師には非常に多くの情報が必要となります」(藤牧さん)
スポ育では「コミュニケーション」「障がい理解」「チームワーク」「チャレンジ精神」「個性」「ボランティア」といった6つの観点における学びを提供している
2024年度は年間363件、12,881名、2010年からの累計で5,576件、216,678名の子どもたちがスポ育を体験。件数が拡大してからも、藤牧さんがkintoneを活用し、ほぼ一人で運用を維持しているそう(©️JBFA)
kintoneを導入するまで、スポ育の実施においては多くの課題があったといいます。
ひとつは「情報管理の煩雑さ」。必要となる情報は、学校や参加者の情報だけでなく、会場までの移動方法、会場の環境、参加者への伝達事項など多岐にわたります。しかも1日15件前後、メールやFAXで寄せられる申込情報をすべてExcelに手入力していたのです。
もうひとつは「講師への情報共有の非効率性」。学校ごとに実施時刻や要望、派遣講師の組み合わせなどが異なるため、講師へのメールはその都度すべて、手作業で作成しなければなりませんでした。
「こうした作業は、当時の私の業務時間の50~60 %を占めていました。すべて手作業かつ担当が私一人なので、入力の漏れやミスが起きやすかったのです。kintone導入後は業務の効率化、作業負担の軽減、ミスの削減が実現して、現在は欠かせないツールとなっています」(藤牧さん)
メールワイズとの連携で学校とのやり取りがスムーズに
具体的に、どのようにkintoneを使っているのか見せてもらいました。
各体験プログラムの管理アプリを連携することで、運用が「よりラクになった」と藤牧さんは話す
実際に使っているスポ育の管理アプリは、こんな感じです。
スポ育講演会の管理アプリの一覧画面
スポ育講演会の管理アプリの詳細画面。さまざまな情報をいったんkintoneに集約している
アプリを開くと、各講師が担当するイベント一覧が表示されます。それぞれのレコードをクリックすると、学校側の担当者、実施日時、各回の時間、参加人数、会場住所等、さまざまな情報を入力できるようになっています。
情報管理や講師への実施情報の共有には、メールワイズや、kintone連携サービス「じぶんシリーズ」(ソニックガーデン提供)を連携させ、調整に役立てているそう。
メールワイズでは、個別送信や履歴の表示、テンプレートによるメール作成などの機能を活用することで、さまざまな作業が効率化されたそうです。
「スポ育は学校とのやり取りがとても多いので、以前は過去のメール履歴を追うのにとても苦労していました。メールワイズには、各学校のメールアドレスと紐づけて履歴を表示できる機能があるので、すごく助かっています」(藤牧さん)
「ブラウザを替えたり、メーラーで検索したりしなくても、kintoneのなかで学校とのやり取りを見られる点も便利です」(松崎さん)
「じぶんシリーズ」で組織の内外問わず情報共有を実現
スポ育の申込みは、kintoneと連携したWebフォーム「じぶんフォーム」で受け付けており、実施校に予約内容や連絡事項を伝える際には「じぶんレコード」を使って情報を外部共有しているそう。
松崎さんは「『じぶんシリーズ』の特徴は、同じデータベースの情報を、組織内の人にも外の人にもタイムリーに誤りなく共有できること」と話します。
そもそもkintoneを導入したきっかけは、ソニックガーデンの担当者のアドバイスだったそう。導入当初、同社の伴走があったことも大きな助けになったという
内部講師への情報共有は、kintoneで行っています。kintoneは、申込みや実施実績のデータベースとして使われており、講師はブラウザやアプリからkintoneにアクセスすれば、必要な情報を閲覧できます。
以前講師をしていた松崎さんは、以前の状況をこんなふうに振り返ります。
「駅からの移動手段や、対象とする児童・生徒の学年、学校からいただいている要望などは毎回異なるのですが、講師は毎日違う学校へ行くので情報がごっちゃになってしまうんです。その点、kintoneアプリを使うと前日にスマホに通知が届くので助かります」
kintoneの標準機能である「リマインダーの条件通知」を設定することで、講師へのリマインドも適宜行える
外部講師は、クラブチームのスタッフ、選手、協会パートナー企業の社員の方など約10名。情報共有する際は「じぶんページ」を使っている
勤怠管理から入ったから広がりやすかった
D&I事業では、このほか集計業務や帳票印刷などでもkintoneアプリを利用しているそう。藤牧さんは「大きな作業をkintoneに任せることで、作業が円滑に進むようになった」と話します。
なお、組織内でkintoneが浸透しやすかった理由について、松崎さんは「管理で使い始めたことがポイントだった」と考えています。
「全員が定期的に使う必要がある勤怠や契約管理から導入したので、『パソコンを起ち上げたらいつも開いている』というツールになっていました。それで自然と『これもkintoneで管理してみようか』という風につながっていったところがあります」
積み重ねた工夫と真似したくなるアイデアがたくさん詰まった、藤牧さんと松崎さんのお話でした。
※「ブラインドサッカー」「ブラサカ」「スポ育」は特定非営利活動法人日本ブラインドサッカー協会の登録商標です。