子どもの見守りを担う「平野宮町みんな食堂」のkintone活用【HOMEステーション】
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非営利組織のIT活用交流会「チーム応援カフェ」で語る一般社団法人HOMEステーションさんの西垣勝貴さん(左)と南延夫さん(右)
平野宮町みんな食堂は、大阪市こどもの見守り強化事業の公認を受けた、子どもも大人もホッとできる全世代の居場所です。活動のなかでkintoneをどのように使っているのかについて、代表の南延夫さんと西垣勝貴さんにお話しいただきました。
場所と給食を失った子どもたちへのお弁当配布からスタート
HOMEステーションは大阪の平野区で活動しています。もともとは児童養護施設を退所したあとの若者を支援しようということではじまった団体です。
コロナで一斉休校になり居場所と給食を失った子どもがいたので、緊急的にお弁当を配る活動をはじめました。
活動をしてわかったのは、辛さやしんどさを吐き出す場所がなくなっていたということです。そこで子どもたちの気持ちや言葉を受け止める場所として、平野宮町みんな食堂をつくっていきました。
地域の子どもだったら誰でも来られるようにしています。みるからにしんどい状態のお子さんというのは少ないです。親や先生や友達といった人との関係がしんどい子も来ています。
サインをどう汲み取り蓄積するか
常日頃からしんどいことを明確に言える子であれば、たくさんの専門家の方も関われます。 しんどさを言えない子については、日々のコミュニケーションのなかから漏れでてくるサインをどう汲み取るかが大事です。
本来ならちょっとずつしか表に出してこないしんどさを、可視化できるようにするにはどうしたらよいのか? 実際に関わって気づいたことを記録していくことにしましたが、メールやLINEでは流れてしまいなかなか蓄積できません。
何かにメモして誰かがExcelに集約していくということでは漏れたり、面倒くさくなったりして、情報が集まらなくなってしまうのではないかと思っていました。
そんなときに仕事でつきあいのあった西垣さんに「kintoneが使えるよ」と教えてもらいました。お金がかかると思ったのですが、チーム応援ライセンスがあったのでとても安く導入できました。
900ユーザーまで定額なので、他の団体さんと区全体で子どもの情報を蓄積するのに使えるのではないかと考えています。
私たちのような民間の食堂をやっている団体は、個人情報の問題もあって行政との情報連携のなかにおいそれとは入れてもらえません。現在は、自分たちは情報を持っているよということで、入っていくことにトライしています。
支援が必要な子どもが見つかった
きちっと情報管理をしているということで信頼感が増し今では行政がしんどい子を見つけて私たちの場所に連れてきてくれるようになっています。
平野区のなかで唯一、要保護児童地域対策協議会のケース会議に民間の食堂として参加しています。
遊びに来たり、ご飯を食べたり、ジュースを飲んだりするなかで見えてくる変化や聴こえてくる言葉を記録し、とても気がかりな子がいた場合は行政に伝えています。
その子のことを既に行政が見守り対象として把握していれば「やはりそうなのか」となり、食堂内でより多くの意識を向けます。
もし、見守り対象となっていない子であれば、行政から学校の先生や地域の児童委員に対して、様子を確認して貰えるように伝えて貰います。
みんな食堂のkintoneはしっかりIDでアクセス制御をかけています。
見守りの平準化をするアプリもつくりました。子どもたちのことがなんとなく気になったら、アプリを見て、どういうことがあったら記録したらいいのかの参考にできます。
ボランティアの方も比較的早く、こういうことは記録したほうがいいんだとわかるようになります。関わる人で記録の程度が変わることを防げています。
子ども見守りアプリについては精度を上げていき、他の食堂でも使っていってもらいたいと思います。
ここからはkintoneでどのようにアプリを組み上げていったかを、西垣さんから説明いただきます。
現場で自主的にアプリをつくれるよう変化
まずお子さんの氏名、生年月日、住所、連絡先、基本となる情報がベースとなる、こども登録簿アプリがあります。アクセスできるのは代表理事とパスワードを付与した中心メンバーのみです。
こども来所記録簿アプリは、一か月ごとに何回来ているかの報告に使うもので来所時の様子を記載しています。入力するのは来所日や目的、どんな様子だったかということで、登録簿の名前や生年月日と紐づけています。
緊急通報記録簿アプリは、どんな様子だと虐待にあたるのかを共通アセスメントに落とし込んでいったものです。
ボランティアの方にも、傷があったといった気になる様子は緊急通報記録簿アプリに記入していただいています。「緊急」を選択し登録すると報告者全員に通知されます。一人が忙しくても、他の人が気づける仕組みにしています。
アプリをつくっていくなかで、どうしたら使い勝手がよくなるか試行錯誤しました。まず南さんはじめメインの方4名にヒアリングをして、アプリをつくりました。
次に講習会をし、使っていただきながら改善を繰り返し、使ってもらえるものにしていきました。
ITに詳しくない方でも使っていただけるように、基本的には標準機能と難しくないプラグインを入れています。
使っていくなかで、ボランティアのメインとなるメンバーから「私もkintoneでアプリをつくりたい」と自主的に声が上がるようになりました。
MANA-vivaのスペース
僕の手を離れたところで改善が進み始めています。文化教室も子ども食堂のなかで開催しているので、参加状況やそのときの様子も記録しています。子ども食堂では見られない、文化教室ならではの変化も見られるようになりました。視点を変えて管理できるのがkintoneのいいところです。
行政や他団体との連携にも活用したい
今後はkintoneと連携する帳票出力サービス「プリントクリエイター」も導入したいと思っています。行政は紙ベースの報告書を求めるので、費用面での課題をどう改善できるかなと考えています。
平野区や他の食堂とも連携して、現場の目とITと両方を使って活動していきたいです。一つ一つは小さなことでも、繰り返し行っているということが可視化されれば、悲惨な状況になる前に防げます。地域全体で見守る体制にしたいです。
行政と連携が取れてきたことで、来所する子は増えていますがマンパワーが足りません。ハードな状況の子たちをどうサポートしていくかも今後の課題です。