「にんしん」にまつわる「困った」にチームで寄り添う【特定非営利活動法人ピッコラーレ】
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誰にも頼れず、たった一人で海を漂流している人たちがたどりつき、ほっとできる潮溜まりでありたいという想いを描いたピッコラーレのイメージイラスト
「にんしん」にまつわる全ての「困った」「どうしよう」に寄り添うことをミッションにしている、特定非営利活動法人ピッコラーレ。
たくさんの相談が寄せられる中、どのように相談者に寄り添っているのかメール相談におけるクラウドサービスの活用法を中心に代表理事の中島かおりさんにお話を伺いました。
「にんしん」にまつわる不安に寄り添う
ピッコラーレ代表理事の中島かおりさん
―ピッコラーレについて教えてください。
ピッコラーレは、「にんしん」をきっかけに、誰もが孤立することなく、自由に幸せに生きることができる社会の実現を目指して、妊娠にまつわる相談を受け付けている団体です。
妊娠葛藤相談、居場所づくり、研修・啓発、調査・政策提言の、4つのプロジェクトを軸にして活動をしています。
ピッコラーレのWebサイトより
妊娠葛藤相談はメールや電話での相談がメインですが、直接会いに行ったり、病院などへの同行支援も行ったりしています。相談にいらっしゃる方の中には、DVでスマホを折られて使えない、料金を滞納しているといった電話番号や通信手段がないハイリスクの方もいるので、SIMカードや端末を貸すこともあります。
―どれくらい相談がくるのですか?
これまで東京、埼玉、千葉を合わせて約5,800人以上、28,000件以上の相談に対応してきました(2020.8.23現在)。
最近は、コロナ対策でステイホームといわれているなか電話よりもメール相談が増えています。2020年4月の東京の相談は690件、うち新規は110件、電話は3割、メールは6割でした。
相談者のうち10代は、去年4月は3割でしたが今年は6割です。5月以降、妊娠陽性判明という連絡が増えています。
誤送信をゼロに
―サイボウズのクラウドサービス「サイボウズ Office」とメールワイズは、いつからどのように使っているのですか?2016年に前身の「一般社団法人にんしんSOS東京」を立ち上げた当初から、私たちはリモートによる窓口の運営を続けてきました。リモートワークを実現するためにまず導入したのが「サイボウズ Office」です。限られた予算の中で、事務所を持たず、複数の相談支援員が情報を共有するため、当初は多くの機能を使っていましたが、今は相談員のシフト管理やタイムカード、ワークフローを主に使っています。
メール相談はホームページのフォームから入ります。一つの相談にお返事案を作成する「担当者」と推敲や送信を担当する「確認者」の2人体制で対応しています。 2017年にメールワイズを導入する以前は、「サイボウズ Office」のメーラーで相談しながら文面を作り修正や確認が完了したあと、別のメーラーにコピー&ぺーストして送信していました。
このフローだと名前や宛先のミスが起きてしまうこともあって...。確認作業もすごく煩雑でした。
県の受託事業も決まり、守秘義務や個人情報の管理を強化しないといけない時期に、どうやったら誤送信を防げるかと解決策を探していたところ、メールワイズにたどり着きました。触ってみたら私たちがやりたいことができそうだと感じ導入しました。
―導入してみていかがでしたか?
おかげさまで誤送信はゼロになりました。
コメント欄で相談し知見を共有
メールごとのコメント欄でメンバーとやりとりができて使いやすいです。メールを書く「担当者」と推敲や送信担当の「確認者」を最初に「メール情報」として割り振れるのもいいですね。コメント欄をチャットのように使用し、お返事案の推敲や見立てについてやり取りをしている
メールワイズに相談が入ると、まず過去に相談した方であればこれまでの相談内容を確認します。新規の方なのか、リピーターさんなのか、ということは「履歴」の数字を見るだけで簡単に把握ができるのでありがたいです。
「履歴」を見てすぐに、新規の方の場合は新しくカルテをつくり、リピーターさんの場合はメールアドレスでカルテNo.を見つけ、コメント欄に書き込みます。
処理状況で、メールごとのステータスを管理できる
「未処理」のメールは、編集を開始したら「処理中」に自動的に変わります。コメント欄で文案を共有し、2人が納得したら、メール案作成「担当者」が本文に貼りつけて下書き保存し「送信待ち」にします。「確認者」がもう一度内容を確認し送信すると「処理済み」になりメール一覧から見えなくなってすっきりする、という感じですね。処理状況の選択肢は、カスタマイズできるので、とても管理がしやすいです。
やりとりが頻回になり、相談者に自分で考えておいてもらう時間をとった方が良さそうな場合は、「明日返信」や「保留」にしたり、リスクが高くて責任者に報告しなければいけない場合は「責任者に報告済み」にしたりと、処理状況の選択肢を工夫しています。
毎日たくさんのメールが届くので......。「メールワイズ」なくしてはピッコラーレのコミュニケーションが成り立たない!という状況です。
「お知らせ」から必要な情報にアクセス
「メールワイズ」は5つのスペースが使えるので、東京、埼玉、ちば、新規事業の4つの相談窓口と運営メールに分けて使用しています。運営メールのスペースでは、ピッコラーレ事務局と東京都の受託事業、一般社団法人時代のアドレス、研修事業の申し込み管理アドレス、中島個人のアドレスと複数のメールアドレスを分けて管理しています。
東京*相談の「お知らせ」。必要な情報にすぐにアクセスできるよう工夫がされている
各エリアの相談対応のメールスペースの「お知らせ」には、ガイドラインやマニュアル、医療機関一覧や報告書、ヒヤリハット、参考URLなどのリンクを貼り、相談員が必要な情報にすぐにアクセスできるようにしています。
メール相談はアート
―メールワイズのテンプレート機能は使っていますか?テンプレートは使っていません。
例えば、内容が「生理が遅れている。妊娠をしたかもしれない、どうしよう。」という相談だったとしても、実際のメールで相談者さんが不安や恐れの気持ちを伝えるために使っている言葉や表現はひとりひとり違っています。生理周期、どんな避妊をしたか、年齢、相手との関係性なども含めて、相談者さんの今の状況を想像しながら、ひとりひとりにメールをその都度作成しています。
「自分のことを考えて返事をくれた」と感じられることが、安心に繋がり、少しずつ信頼してもらえるようになり、どうして一人きりで抱えているのか、だんだんと詳しい状況がわかってくるのかもしれません。私たちの相談窓口は匿名での相談が可能なのですが、メールに名前やニックネームを書いてくれている場合も少なくありません。その場合は、その方に向けたお返事なので、メールの中でもそのお名前で呼ぶということを大切にしています。
例えば、短い文章で送ってきてくれた子にたくさんの質問を書いて長文で返信をしても、戻ってきたお返事には最後の質問への答えだけだったりします。だから、たくさん聞きたいことがあったとしても、短文のメールで何度もやりとりするようにしたり、 一方、長文で送ってくれる子の場合は、私たちも情報をたくさん盛り込んだ内容にして一度のメールでいろんなことを聞くなど工夫しています。
相手に合わせた間合いをとると、ちゃんとキャッチボールになっていくんです。こういうやりとりはテンプレートではなかなかできないことだなって思います。
1通のお返事を送信する過程の中で、いただいたメールに対して相談員同士で感じたことを共有しながら、ああでもない、こうでもないと、どんな気持ちでこのメールを送ってくれたのだろうか、そんなことを想像しながら返信案の作成・推敲をしています。1通のお返事を送る過程でのこのようなやりとりは、まるで小さなケースカンファレンスだなぁと思います。
メールワイズは、ミニケースカンファレンスのようなやりとりに適しているツールだと感じています。 相談員間でもいろいろな価値観や見立てに触れ、相談者さんを想いながら少しずつ表現が変わるのですが、出来上がったお返事案を見て、「メール相談はアートみたいだな」と感じることもあるんですよ。
NPO法人ピッコラーレ誕生時のメンバー集合写真
―今後の展望を教えていただけますか?相談窓口を支えているシステムは、活動しながら必要な機能を継ぎ足し、建て増ししながらつくってきたものです。さらに相談員の負担を軽くし、相談者さんとの現場に集中する環境整備のためにも、カルテと電話やメールを一元管理できたらいいですね。
窓口には男の子からの相談も寄せられていて、全体の16%を占めています。性別に関係なく、自分の身体のこと、避妊のことを正確に知りたいと思っていることが伝わってきます。10代からの相談ではYouTubeを見て相談窓口を知ったという方が多いので、若者向けに動画をつくる予定です。
コンドームのこと一つとっても、買うのが恥ずかしい、高い、付け方やはずし方がわからない、破れたらどうしよう、サイズが合わない、ラテックスアレルギーがある、など様々な悩みがあります。相談窓口に寄せられている相談の中でも、特に中高生が悩んでいることについて安心してもらえるような情報をネットに上げていきたいです。
相談者に応じて、きめ細やかに対応していることがとてもよく分かりました。相談者を大切にし、寄り添いたい、という気持ちが「メール相談はアート」という言葉に表れているように感じます。
中島さん、ありがとうございました!